当記事では、経団連が定める就活ルールのおさらいと、2023卒採用に向けて解禁された採用活動について解説していきます。
この記事を読むことで、以下の理解が深まります。
- 経団連の就活ルールがなぜ定められているのか
- なぜ毎年のように就活ルールが変更されるのか
- 就活ルールの変更による今後の採用活動への影響
これまでの就活ルールの歴史を振り返りながら、2023年卒の就職、採用活動の日程に関する考え方や企業が対応するべきプロセスについてご紹介していきます。
経団連が定める就活ルールが2022年で撤廃される?
経団連とは「日本経済団体連合会」を略した言葉で、日本経済を発展させることを目的とした団体です。
2021年4月の時点で、
- 地方別経済団体:47団体
- 代表的な日本企業:1,461社
- 製造業やサービス業等の主要な業種別全国団体:109団体
から構成されています。
現在の経団連が定める就活ルールは、2017年度の新卒採用から適用されたものであり、2023年度の新卒採用までが対象です。
これまで「学業を優先してほしい」と考える大学側と「スムーズに就職してほしい」と考える経団連との間で、幾度となくルールの改定が行われてきました。
そして2024年度の新卒採用から今までの経団連の就活ルールではなく、政府主導の新しい就活ルールが適用されることになります。
これを機に
- 経団連の就活ルール
- 政府主導の就活ルール
それぞれの就活ルールを改めてみていきましょう。
経団連の就活ルールとは?
経団連の就活ルールは2017年卒の新卒採用から適用されてきました。
押さえるべき内容は以下のとおりです。
- 企業情報などの広報解禁日:3月1日
- 選考解禁日:6月1日
- 内定解禁日:10月1日
- 2021年以降は経団連からルールを示さなくなった
これらを踏まえて大手求人媒体(マイナビやエン転職など)は就職サイトをオープンしました。
しかし実際にこのルールを厳守していたのは、経団連に加盟している企業のうち、半数程度の企業しかありませんでした。
ルールの改定が何度も行われているうちに、このルールを守る中小企業が少なくなり、採用募集をしたいタイミングで採用活動を行なっている様子(通年採用)もみられました。
また、大学3年生のサマーインターンを通して採用に直結させていたケースも多く見られました。
こうした背景を踏まえ、2021年以降は、経団連から採用選考に関する指針(就活ルール)を示さないことが発表されたのです。
政府主導の新しい就活ルールとは?
政府が主導となる就活ルールは、現在は以下のように定められています。
- 企業情報などの広報解禁日:3月1日
- 採用・選考解禁日:6月1日
経団連が就活ルールの撤廃を発表しましたが、急なルール変更による学生の不安を考慮し、2024年卒の新卒採用までは「大きなルール変更は行わない」とされています。
しかし今後、新卒一括採用という慣習について見直しが行われる見通しです。
就活ルールの改定が引き続き行われることが予想されるので、社内で新卒採用の取り組み方について話し合っておくと良いでしょう。
就活ルールに沿って採用活動を進めるには?
採用活動をスムーズに進めていくには、時代に合った就活ルールに沿って、スケジュールを立てていきましょう。
- 広報解禁日
- 選考解禁日
- 内定解禁日
それぞれの段階で取り組むべきアクションを解説します。
企業情報などの広報解禁日:3月1日までに取り組むこと
3月1日までには、以下について取り組んでいきましょう。
- 採用ペルソナを設定し採用担当者と関連部署の全員に共有しておく
- 採用ペルソナに合った求人媒体や採用ツールを選定する
- 企業説明会、バーチャルオフィスツアーなどの準備を進める
3月1日になると、求人媒体のサイトがオープンし、学生がそのサイトを通じて会社説明会のエントリーを行うことができます。
経団連の就活ルールがしばらく適用されることが想定されるため、3月1日までにエントリーを受けたときの対応なども確認しておきましょう。
選考解禁日:6月1日までに取り組むこと
選考が解禁される6月1日までには、以下に取り組んでおきましょう。
- 応募数を増やすために学生とのタッチポイントを増やす
- 募集する職種と採用枠を確認する
- 選考フローを組む
経団連に所属している企業は6月1日より選考を開始します。
注意点として、経団連に所属していない(あるいは所属しているけど同意していない)中小企業は3月末〜4月から選考を開始します。
6月時点ですでに内定を受けている学生もいるため「採用したい人材がすでに内定を受けている」という状況も想定しておきましょう。
内定解禁日:10月1日までに取り組むこと
内定解禁日となる10月1日までには、以下に取り組んでおきましょう。
- 最終選考で採用する人材を慎重に選ぶ
- 内定辞退者を出さないために内定者をフォローする
- 内定式のプログラムを考案する
10月1日までは「内々定」という形でしか伝えられず、入社が約束されたものではありません。
10月1日以降は、内定した学生に正式に「内定しましたよ=入社できますよ」と伝えることができるようになり、多くの企業は、10月1日に内定式を行なうことで内定を確定させています。
しかし、内定式で内定を確定させた学生は内定辞退ができないというわけではありません。
日本の憲法により、いつでも内定辞退を申し出ることができることも合わせて理解しておきましょう。
就活ルールを守らないとどうなるの?
経団連の就活ルールで、違反があった場合、
- 注意
- 勧告
- 違反社名の公表
がされていました。
今後適用される政府主導の就活ルールには、罰則などのペナルティは設けられていません。
しかし、経団連や新経連を中心に、ルールの周知や実態調査が行なわれることが想定されています。
当面は、学生や業界の動向を確認しつつ、自社にあった採用活動のスケジュールを計画する必要があることを認識しておきましょう。
大学生の就活の動向
大学生の就活動向を見ていくと、大まかに以下のような流れで活動しています。
大学3年生の活動
5月〜6月ごろ | 企業調査、研究 開始 |
6月〜 | サマーインターンシップのエントリー開始 |
7月〜 | サマーインターンシップの参加 |
1月〜2月 | 自己分析、エントリーシート作成、完成 (就職したい企業や業種を絞っている) |
3月 | 就職サイトや企業の採用サイトから会社説明会に応募・エントリー開始 |
大学4年生の活動
4月 | 業界研究をしながら会社説明会に参加、エントリー先の選別 |
5月 | 経団連に未所属の中小企業による採用選考開始 |
6月 | 経団連に未所属の中小企業による内々定または内定 |
7月〜9月 | 随時選考、内々定獲得 |
10月 | 内定通知 |
特に就活に対する意識の高い学生であれば、大学3年生の5〜6月ごろから企業研究を開始します。
大学3年生の夏に行われるサマーインターンシップに参加するためです。
6月にサマーインターンシップのエントリーができる就職サイトがオープンするため、それまでにインターンシップに参加したい企業に目星を立てていく流れになります。
おもな情報源は、SNSや企業のコーポレートサイトを活用することが多くなるため、この時点での情報発信がカギとなるでしょう。
ベンチャー企業の採用活動は早い
ベンチャー企業の情報解禁や採用活動を開始する時期は、企業によるもので決まりはありません。
早い企業だと、大学3年生の10月ごろには採用情報を解禁する企業もあります。
加えて、大手や中小企業に比べて採用人数が数十名程度であることがほとんどです。
そのため、優秀な人材を求め、SNSやインターンシップを通じて採用活動を行なう傾向が強くなります。
採用人数が少ないからこそ
- 新入社員の早期離職を防ぐ
- 入社後早いうちに活躍してもらいたい
との考えから、就活ルールには則らずに採用活動をしているケースが多く見られます。
取り組んでおきたい!具体的な採用活動
ここから先は具体的な採用活動の方法についてご紹介していきます。
優秀な人材を獲得するために有効な方法は以下のとおりです。
- 採用サイトの開設やコーポレートサイトのリニューアル
- 自社サイトや企業SNSにて採用広報に力を入れる
- 同業他社との差別化を図る=ブランディングに力を入れる
それぞれ詳しく解説します。
採用サイトの開設やコーポレートサイトのリニューアル
コーポレートサイトを採用に効果的な仕様にリニューアルしたり、採用サイトを開設していきましょう。
2020年卒以降は「デジタルネイティブ世代」と言われている世代です。
デジタルネイティブ世代に受け入れられやすいデザインや機能を充実させることで、企業の印象が大きく変わります。
コーポレートサイトや採用サイトは企業の顔にもなり、新卒者に最初の印象を与える重要な役目を持ちます。
採用したい人材に刺さるようなコンテンツを発信していくなど、他企業との差別化を図れる独自の工夫が必要です。
自社サイト内や企業SNSでの採用広報
自社サイト内のブログ機能やnote、TwitterなどのSNSを活用して採用広報を行っていきましょう。
採用広報で社内の情報を公開しておくことで、就活ルールの広報解禁日3月1日から情報収集を始める求職者が、より多くの情報を得やすくなり充実した企業選びが可能になります。
SNSを利用して採用広報を行うことは、デジタルネイティブ世代とのタッチポイントを増やすことにもつながります。
事業の取り組み情報だけでなく、日常的な情報や働く環境が想像できる情報を発信することがポイントです。
企業アカウントより、社員個人の名前でアカウントを作ることで求職者が親しみやすく感じることもあります。
このように自社サイトやSNSを通しての情報を発信することによって、企業の認知度を向上できることを理解しましょう。
同業他社との差別化=ブランディング
同業他社の動向を確認し、採用活動においても差別化を図りましょう。
例えば、同業他社が採用広報を採用ツール上のみで行っていた場合、より多くのタッチポイントを獲得するためにTwitterやInstagram、Tiktok、Youtubeなどを活用してみるのも良いでしょう。
あるいは、同業他社が掲載していないコンテンツを作り、自社サイトに載せるなど、他社が行っていないことに目を向けるのも効果的です。
また、アウターブランディングだけでなく、インナーブランディングにも取り組むことでリファラル採用などの活性化にもつながります。
詳しくはこちらの記事で解説しております。
まとめ
2023年卒以降の採用活動は、以下の流れで進めていきましょう。
①経団連、政府主導の就活ルールのスケジュールを把握しよう。
現時点では以下のとおり。
企業情報などの広報解禁日 :3月1日 選考解禁日 :6月1日 内定解禁日 :10月1日 内定式 |
②学生やベンチャー企業の動向を把握しよう
大学3年生の活動 5月〜6月ごろ:企業研究開始 6月〜:サマーインターンシップエントリー開始 7月〜:サマーインターンシップ参加 1月〜2月:自己分析、エントリーシート完成(就職したい企業や業種を絞り切っている) 3月:就職サイトや企業の採用サイトから会社説明会に応募・エントリーを開始 大学4年生の活動 4月:業界研究をしながら会社説明会に参加、エントリー先の選別 5月:経団連に未所属の中小企業による採用選考開始 6月:経団連に未所属の中小企業による内定 7月〜9月:随時選考、内々定獲得 10月:内定通知 ベンチャー企業 早ければ大学3年生の10月ごろには情報解禁 |
③社内で取り組んでおきたい採用活動を洗い出そう
採用サイトの開設やコーポレートサイトのリニューアル自社サイトや企業SNSでの採用広報に力を入れる同業他社との差別化を図る=ブランディングに力を入れる |
以上の流れはあくまで一例ですが、学生やベンチャー企業の動向について、参考にしてみてください。
新卒採用を成功させたいのであれば、学生と同業他社の動向をリサーチした上で、早めに取り掛かるのが重要です。
スムーズな採用活動を実現するために、計画的に、かつ戦略的に進めていきましょう。